なぜ非同期?
Rustは、高速で安全なソフトウェアを書くことを可能にします。 しかし、非同期プログラミングは、このビジョンにどのようにフィットするのでしょうか?
非同期(訳注
: asynchronous)プログラミング、略してasyncは、
多くのプログラミング言語でサポートされている並行プログラミングモデルです。
async/await
構文によって、通常の同期型プログラミングのlook&feelの多くを維持しながら
少数のOSスレッドで多数のタスクを同時に実行することができます。
非同期 vs 他の並行処理モデル
並行プログラミングは、通常の逐次プログラミングに比べると成熟度が低く、「標準化」されていません。
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OS スレッドはプログラミングモデルを変更する必要がないため、並行処理の表現が非常に簡単です。 しかし、スレッド間の同期が難しい場合があり、パフォーマンスのオーバーヘッドも大きくなります。 スレッドプールはこれらのコストを一部軽減することができますが、 大量のI/Oバウンド(訳注:処理に掛かる時間がI/Oに依存する)なワークロードをサポートするには十分ではありません。
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イベント駆動型プログラミングは、コールバック と組み合わせることで非常に高いパフォーマンスを発揮しますが、 冗長で"非線形"な制御フローになる傾向があります。 データの流れやエラーの伝搬が分かりにくいことが多いです。
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コルーチンは、スレッドのようにプログラミングモデルを変更する必要がないため、使い勝手が良いです。 また、非同期と同様に、多数のタスクを扱うことができます。 しかし、システムプログラミングやカスタムランタイムの実装を行う者にとって重要な 低レベルの詳細が抽象化されています。
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アクターモデルは、すべての並行計算をアクターと呼ばれる単位に分割し、 fallibleなメッセージの受け渡しによって通信を行います。 アクターモデルは効率的な実装が可能ですが、フロー制御や再試行ロジックなど、 実用上の課題が多く残されています。
要約すると、非同期プログラミングは、Rustのような低級言語に適した高性能な実装を可能にする一方で、 スレッドやコルーチンの人間工学的な利点をほぼ満たすことができます。
Rustでの非同期 vs 他の言語
非同期プログラミングは多くの言語でサポートされていますが、詳細は実装によって異なります。 Rustの非同期の実装は、大多数の言語といくつかの点で異なっています:
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Rustでは、futureは不活性 で、ポーリングされたときだけ進行します。 futureをドロップすると、それ以降の進行が停止します。
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Rustでは、非同期はゼロコストです。つまり、使う分だけコストを支払えばいいのです。 具体的には、ヒープ割り当てや動的ディスパッチなしで非同期が使えるようになります。 これはパフォーマンスにとって素晴らしいことです! これにより、組み込みシステムのような制約のある環境でも非同期を使用することができます。
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Rustには、組み込みのランタイムはありません。 その代わり、ランタイムはコミュニティがメンテナンスするクレートによって提供されます。
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Rustでは、シングルスレッドとマルチスレッドの両方のランタイムが利用可能であり、それぞれ長所と短所があります。
Rustでの非同期 vs スレッド
Rustにおける非同期の主な代替手段は、OSのスレッドを使用することです。
std::thread
を直接使用するか、
スレッドプールを介して間接的に使用します。スレッドから非同期への移行、またはその逆は、
通常、実装と(ライブラリを構築している場合は)公開されているパブリックインターフェースの両方において、
大きなリファクタリング作業を必要とします。そのため、ニーズに合ったモデルを早めに選ぶことで、
開発期間を大幅に短縮することができます。
OS スレッドはCPUとメモリのオーバーヘッドが伴うので、少数のタスクに適しています。 アイドル状態のスレッドでさえシステムリソースを消費するため、スレッドの生成と切り替えは、非常に高価です。 スレッドプールライブラリは、これらのコストの一部を軽減するのに役立ちますが、すべてではありません。 しかし、スレッドを使えば、既存の、同期的に動作するコードを大幅に変更することなく再利用することができ、 特定のプログラミングモデルは必要ありません。OSによっては、スレッドの優先度を変更することもできます。 これは、ドライバなど遅延が重要となるアプリケーションに便利な機能です。
非同期により、CPUとメモリのオーバーヘッドが大幅に削減されます。 特にサーバーやデータベースなど、I/Oバウンドなタスクが大量に発生するワークロードにおいて顕著です。 非同期ランタイムは、大量の(安価な)タスクを処理するために少量の(高価な)スレッドを使用するため、 条件が同じであれば、OSスレッドよりも桁外れに多くのタスクを扱うことができます。 しかし、非同期Rustは、非同期関数から生成されるステートマシンと、 各実行ファイルが非同期ランタイムを含むことにより、バイナリサイズが大きくなってしまいます。
最後に、非同期プログラミングはスレッドより 優れている わけではなく、異なるものです。 もしパフォーマンス上の理由で非同期を必要としないのであれば、スレッドの方がよりシンプルな選択肢になることが多いでしょう。
例: 並行ダウンロード
この例では、2つのウェブページを同時にダウンロードすることを目標としています。 典型的なスレッドアプリケーションでは、並行処理を実現するためにスレッドを生成する必要があります:
fn get_two_sites() {
// 仕事を行うために、2つのスレッドを生成します。
let thread_one = thread::spawn(|| download("https://www.foo.com"));
let thread_two = thread::spawn(|| download("https://www.bar.com"));
// 両方のスレッドが完了するのを待ちます。
thread_one.join().expect("thread one panicked");
thread_two.join().expect("thread two panicked");
}
しかし、Webページのダウンロードは小さな作業であり、 このような小さな作業のためにスレッドを作成することは非常に無駄があります。 大規模なアプリケーションの場合、ボトルネックになりやすいのです。 非同期Rustでは、余分なスレッドなしにこれらのタスクを同時に実行することができます:
async fn get_two_sites_async() {
// 完了するまで実行することで、ウェブページを非同期でダウンロードする
// 2つの異なる "future" を作成します。
let future_one = download_async("https://www.foo.com");
let future_two = download_async("https://www.bar.com");
// 両方の "future" を同時に完了するまで実行します。
join!(future_one, future_two);
}
ここでは、余分なスレッドは生成されません。 さらに、すべての関数呼び出しは静的にディスパッチされ、ヒープの割り当てもありません! しかし、そもそも非同期になるようにコードを書く必要があります。この本がその手助けになるでしょう。
Rustでのカスタム並行処理モデル
最後に、Rustはスレッドか非同期かの二者択一を迫るものではありません。 同じアプリケーション内で両方のモデルを使用することができます。 スレッド依存と非同期依存が混在している場合に便利です。 実際、イベント駆動型プログラミングのような全く別の並行処理モデルも、 それを実装したライブラリさえあれば使うことができます。